「ジオパーク」ということばをご存じだろうか。
ジオとは地球、大地という意味で、パークは公園。「ジオ(地球)に関わる様々な地質遺産―地層、岩石、地形、火山、断層などの地質的に貴重あるいは美しい自然遺産を保全すると同時に、観光資源としての利活用を目指す場所」を指す。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の支援で2004年には「世界ジオパークネットワーク(GGN)」が誕生し、現在18カ国の57カ所が認定を受け加盟しているが、日本国内でGGNの認定を受けた地域はまだない。 ※ジオパークとは http://www.gsj.jp/jgc/whatsgeopark.html このジオパークに男鹿半島を申請しようという動きがある。昨年、秋田大学工学資源学部の白石建雄教授が中心となって、大潟村・豊川油田(潟上市)も含めた「あきたジオパーク」構想を提唱したもので、その協議会の設立準備に向けた勉強会とでもいうべき男鹿半島巡検が今月上旬に行われ、私も参加した。 男鹿半島はおよそ5000万年前からの代表的な地層が見られる模式地として、地学研究者にとっての聖地といっても大げさではないところだ。いってみれば「男鹿半島まるごと地質博物館」。ただ、地学は一般にはあまりなじみのない学問ということもあってか、男鹿を訪れる観光客はもちろん、男鹿の住人でさえ、その価値を理解しているとは言い難い。かくいう私もそのひとりなので、この巡検は大変ためになった。 ※男鹿の大地の年表 http://ay.nu/~sivaco/oga/strata/nenpyou.htm ①鵜ノ崎海岸(女川層/およそ1000万年前) ![]() 最初の巡検地鵜ノ崎海岸で、白石先生(秋田大学名誉教授)のレクチャーを聴く参加者。1日で男鹿の地質をすべて観察するのはとても無理なので、アプローチが簡単な場所を時計回りに駆け足で回ることに。 ②館山崎(台島層/およそ2000万年前) ![]() 私が子ども時代を過ごした椿地区にあり、火山噴出物のグリーンタフ(緑色凝灰岩)が見られる。ここに秋田大学鉱山学部(現・工学資源学部)の地質学科の学生たちが夏休みになると必ず巡検に訪れた。小学生の私は彼らが通り過ぎた後の知的興奮をおさえきれず、家からカナヅチやハンマーを持ち出して、石を砕くまねごとをしたことが何度かある。 ③潮瀬崎(門前層/およそ2500万年前) ![]() 岬一帯の波食台にはゴツゴツした礫岩(れきがん)が点在していて、有名?なゴジラ岩をはじめ、さまざまな岩の造形が見られる。マグマの貫入による岩石の状態を観察するにもうってつけの場所。 ④カンカネ洞 加茂青砂地区にある高さでは男鹿半島最大の海食洞窟。四つの洞門がある。⑤目潟火山と戸賀湾 ![]() 三つある目潟(マール)のうち、平成18年に湖底ボーリング調査が行われた一ノ目潟では、鮮やかな「年縞」(湖底の堆積物の層)が現れ、約3万年の様々な自然環境の歴史が分析された。 ⑥鬼の俵ころがし(赤島層/およそ5000万年前) ![]() 男鹿半島を形成している地層のうち、最も古いのがピンク色の基盤岩(アダメロ岩/およそ6000万~)で、その上に重なっているのが火山噴出物からなる赤島層。帯状にのびる茶色の岩脈(矢印)はアダメロ岩のすき間から噴出した粗粒玄武岩で、その形状から「鬼の俵ころがし」(別名「鬼の田ッコ」)と呼ばれている。 ⑦入道崎鹿落とし(赤島層) 入道崎先端の東側にある鹿落としの断崖は赤島層の入道崎火成岩からなる。男鹿に鹿が生息していた江戸時代、鹿狩りでこの断崖に鹿を追い込み落下させたことから、この名がある。⑧西黒沢海岸(西黒沢層/およそ1500万年前) ![]() 浅い海に堆積した地層。砂岩、礫岩などが互層となっている海岸の波食台の岩石には、貝やウニ、大型有孔虫などの化石が含まれている。 ![]() 大型有孔虫のオパキュリアの化石(矢印)。大型といっても5mmくらいなので、注意して探さないと見つけられない。 ⑨男鹿温泉郷の石灰華 通称「鬼の隠れ道」。温泉水に溶け込んでいた石灰分が沈澱して薄い層の岩石を形成したもので、かつて石灰石を運んだトロッコ道の両側に断面が露出している。ここを訪れる観光客はあまりいないようだが、もっと知られていい場所だ。⑩安田海岸(鮪川層・安田層・潟西層/およそ40万年~9万年前) ![]() 高さ20m以上の海食崖が数キロにわたって続く安田海岸は、今回の男鹿半島ジオパーク巡検のハイライト。 白石先生の話で、安田海岸の地層には、洞爺湖、阿蘇山、さらには白頭山(北朝鮮・中国国境)からの火山灰が積もっているのを知り、驚いたのだが、ここではこうした広域火山灰により地層の堆積年代が詳しく解析されていて、砂浜を200mほど歩くだけで男鹿半島の形成の30万年分の時を体験できる。まさに地層の博物館にふさわしい場所だ。![]() 男鹿半島にはジオパークに値する地質遺産、観光資源があることは疑いがない。ただ、ジオパークになるためには、越えなければならないハードルがいくつもあると思う。これからは男鹿半島の地質をこれまでの学者・研究者―いわゆる地質屋さんの研究対象から、観光客・一般住民の興味関心のありどころ、知的好奇心を満足させる対象へと広げ、そこから地域を見直すことが何より求められるだろう。言うほど簡単じゃない話ではあるが…。 >>地質学科の学生たちが夏休みになると必ず巡検に訪れた。小学生の私は彼らが通り過ぎた後の知的興奮をおさえきれず、家からカナヅチやハンマーを持ち出して、石を砕くまねごとをしたことが何度かある。 これ、わかります。わたしは下宿していた鉱山学部の学生さんから岩石じゃなくて鉱物をいくつかもらったのですが、今それらは手元には残ってない。toshibonさんが書いてるとおり「知的好奇心を満足させる対象へと広げ」このあたりがいちばん難しいところでしょうね。 コメントありがとう。fuqusukeさんちに下宿していた鉱山学部の学生さんから鉱物をもらったことは、前にも聞いたことがあるような気がします。日本で唯一だった秋田大学の鉱山学部は、鉱山の衰退から工学資源学部に名を変えてしまいました。地質学科も今はなく、地質を学ぶのは地球資源学科というところのようです。 今回、大学の地質学の先生からいろいろ教わったのですが、自然科学系の学者というのは、偉大なるオタクなんだと改めて思いました。 しろうとかんがえでは真山、本山あたりが現在も活動を続けている活火山であれば男鹿半島がジオパークになる気運が高まるのではないかと思います。研究者にしてみればそんなのなくても、そのままでジオパーク男鹿なのでしょうけれど。 日本は火山と地震の国なので、活動中の火山があると確かにジオパークに認定されやすいかもしれませんね。現在、世界ジオパークに申請中なのが洞爺湖有珠山、糸魚川、島原半島というのも、その意味で納得できます。この3カ所と比べると、男鹿半島はマニア受け(玄人受け)はするけれど、地質の専門的な知識を持たない一般人にとっては、ちょっと地味な印象はぬぐえない。 小学生の時、寒風山は「死火山」(今、この用語は使われていないようですが)だと教わったけれど、この先未来永劫、もう噴火することはないのかな。でも、男鹿の山が桜島や浅間山のように時々噴火する活火山だったら、ここで暮らすのはきっと大変でしょうね。 日本という国を諸外国と比較してみたとき「箱庭のような国」なのだと思うけれど男鹿半島もなんか「箱庭のような半島」だと言えるかもしれない。規模は小さいがミニチュアのようにいろんなものが詰まっている。地質だけでなく植物層にしてもおそらく変化に富んでいるじゃないのかな。 これで八郎潟が干拓されていなければ「まほろばの地」だな。 >規模は小さいがミニチュアのようにいろんなものが詰まっている。 まさに男鹿半島はfuqusukeさんのことば通りだと思います。ただ、男鹿半島&日本が「箱庭のよう」というのは、ちょっと違うような。 日本人は自分の国を「小さな島国」と表現したりするけれど、決して小さな国なんかではない。面積もそうだけど、海岸線の複雑さ、山岳の急峻さ、流氷から珊瑚礁まで見られる自然環境の幅広さ。あと自然災害の凶暴さが諸外国と比べてハンパじゃない。台風、地震、津波、噴火、台風、集中豪雨、雪害…。ちんまりと箱庭におさまりきらないというか、もっとワイルドで多様性に富んでいる。こんな国、あまりないのでは? >これで八郎潟が干拓されていなければ「まほろばの地」だな。 「まほろばの地」を英訳すると、もしかしてネバーランド? (マイケル・ジャクソン追悼) ちょっと言葉が足りなかった「箱庭のような国」と表現したのは小さいという意味ではなく、いろんなものが詰まっているということです。toshibonさんのいう「ワイルドで…」かどうかはわからない。ほどよい多様性がある。このほどよい多様性は外国(特に大陸)から日本に来たひとの目には「箱庭のような国」と映るにちがいない。
マイケル・ジャクソンは薬物で身体が蝕まれる以前にこころを病んでいたね。これは前に書いたけれど。
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